副腎皮質ステロイドは様々な疾患の治療に用いられ、非常に優れた治療薬ではあるが、副作用もいろいろあって、その中の一つにステロイド精神病がある。この副作用は時に重大な結末(自殺)にも至るため、ステロイドを使用する医師は絶対に知っておき、かつ処方する際に意識しておかなければいけない。
ステロイド精神病は、プレドニゾロン換算で1日40mgを超えると発生頻度が数十倍にも上昇する。その状態像としては、躁状態が35%、うつ状態が28%、躁うつ混合状態が12%で、せん妄が13%、精神病性障害が11%である。
ステロイドの使用開始から発症までの期間の中間値は10日前後だが、4割が最初の1週間に、また2週間以内に6割、6週間以内に9割が生じる。それ以降の発症も稀ではない。
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精神科治療学 Vol.25増刊号 今日の精神科治療ガイドラインより)
これまでステロイド精神病と診断した患者は3人、引き継いだ患者が1人いる。うち2人が眼科疾患、1人が腎炎、1人が顔面神経麻痺に対してステロイドを内服していた。2人が他院でステロイド治療を開始され発症している。また2人がうつ状態で、残り2人が躁状態で発症した。
自ら診断した3人のうち3人ともが、ステロイド内服開始にあたって医師からステロイド精神病に関する説明をされていなかった、あるいは、されたかもしれないが覚えていなかった。ステロイド精神病は、ステロイドを徐々に減らしたり中止したりすることで多くの患者が改善する。放置すると自殺という結果もありえる。だから、最初に説明しておくことは非常に大切だ。またステロイドを飲んだ人の様子がおかしい時に「薬剤性かもしれない」という予備知識があるだけで、本人も家族も余裕をもって対応できる。
以上、ステロイドを高用量で処方することがある医師には、ぜひとも知っておいて欲しいことである。