2011年12月29日

「知っていたら、もっと面会に来たのに!」

高齢者の入院では、せん妄が非常にやっかいな問題となる。点滴を引っこ抜いて血まみれになるくらいは可愛いもので、夜中に興奮する、叫ぶ、歩きまわる、挙げ句にコケて骨折する人までいる。

高齢者を入院させる場合、家族には、
「病院は決して100%安全という場所ではないし、常に見守りできるわけでもない。だから、転倒して骨折するということは、なるべく防止したいが完全には防げない。また、この年齢だと、そういう事故以外にも心臓や脳になにが起こるか分からない。その時にあたふたと電話しても間に合わない。突然のことで考えきれないことは多いと思うが、とりあえず現時点で、急変時にどういう対応を希望されるかを確認しておきたい」
というところまで説明する。このあたりで手抜きすると、いろいろなトラブルが発生する。

どこでも起こる可能性のある患者の転倒・骨折だが、これに対して家族が苦情を言うケースも多い。骨折があった後、主治医から、
「認知症もあって、夜間のせん妄状態で起きた転倒です。昼間に起きておいてもらうのが一番だけど、病院もなかなか人手が足りないので」
といった説明を受けた家族が、
「そうと知っていたら、もっと病院に来ていたのに!」
と怒りだすこともあるらしい。

経験上、身体科入院中のせん妄が問題となって精神科に紹介された患者で、家族に対して、
「せん妄予防は昼間に起きておくのが第一です。そのためにスタッフが常時付き添えれば良いのですが、とても手が足りません。ご家族に面会を増やしてもらうか、付き添ってもらうか、それが一番良いとは思います」
と説明して、実際に面会を増やしたり付き添ったりする家族はごくわずかである。

入院・入所をさせるとき、100%の安全保証を求められると苦しい。

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